文明の利器「ルーシャズ」を使い、日常のワインをちょっと贅沢に化けさせる裏技。
前回、デキャンタという美しいガラス瓶を使い、時間をかけてワインを開かせる「デキャンタージュ」の魅力についてお話ししました。
ワインが空気を吸い、静かに花開いていくのを待つ時間は実によいものです。けれど、日常の食卓で毎晩デキャンタを持ち出し、じっくりと時間を置くのは、少しばかり大掛かりで億劫に感じられることもありますよね。
そんな時、サイドボードの奥に佇む我が家の小さな秘密兵器に手が伸びます。
「LUSCIOUZ(ルーシャズ)」のスタンド付きエアレータです。

数千円ほどで購入したこの器具は、今や我が家の日常に欠かせない相棒になっています。スタンドに設置した器具の上からワインを注ぐと、ジュワーッと小さな空気の泡を巻き込みながら、滑らかな一筋となって下のグラスへと満ちていきます。流れるような立ち姿と音には、どこか静かな現代の儀式のような趣(おもむき)があって気に入っています。
デキャンタが「じっくり深呼吸をさせる時間」なら、このエアレータは注ぐわずか数秒の間にワインと空気を一気に混ぜ合わせる「現代のタイムワープ装置」です。
初めて試したときの驚きは、今でも忘れられません。
開けたばかりで若く、渋みがトゲトゲとしていた日常用の赤ワインが、この器具を通った瞬間、まるで時間を数年飛び越えたかのように角が取れ、まろやかな味わいに変化したのです。「1,000円のワインが3,000円の味に化ける」という噂も、あながち嘘ではないと実感しました。
もちろん、世の中には注ぎ口に直接差し込むだけの簡易的なポアラー型もあり、あれはあれでコンパクトで便利な素晴らしいツールです。けれど、このスタンド付きのしっかりした器具を使って注ぐ「ひと手間」が、ワインを味わう時間を少しだけ特別なものにしてくれる気がしています。
実は、我が家のキッチンでもこのルーシャズが思わぬ活躍を見せています。
妻がビーフシチューを煮込むために買ってくる、スーパーの格安ワイン。料理に使うのはせいぜい4分の1程度で、残りの4分の3はいつもキッチンにぽつんと残されます。安めのワインゆえにそのまま飲むには少し荒削りなのですが、このエアレータを通してグラスに注ぐと、驚くほど滑らかな口当たりに化けてくれるのです。

妻がコトコトとシチューを煮込む甘い香りの傍らで、私は余ったワインを一人静かにグラスに注ぎます。我が家においてシチューの夜は、いつしか「化けたワインをいただくささやかな贅沢の日」になりました。
本式のデキャンタでゆったりと時間を愛でる夜もあれば、こうした現代の道具を借りて日常のワインをちょっと贅沢に化けさせる夜もあります。
スタイルに縛られず、日々の暮らしの中でそんな小さな変化や工夫を楽しむこと。これこそが、家飲みのいちばんの醍醐味なのかもしれません。
エアレータに興味をお持ちの方は、Wine & Whisper セレクトショップの「ワインのある暮らしを彩る道具たち」の扉を開いてみてください。